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突然起こる強い不安から、息苦しい、過呼吸、動悸がする、胸苦しい、喉が詰まる、手足がしびれる、めまいといった身体症状。不合理な反応を繰り返す。社会不安障害・パニック障害・強迫性障害などの「不安障害」について【つじ心療内科 院長 辻誠一先生】 | 病気や症状。治療や予防に役立つ 病院・医院・クリニック情報サイト『広島ドクターズ』
(この記事は2013年6月21日時点の情報です)

辻誠一 先生(心療内科)

不安から起こる様々な症状。「不安障害」ってどんな病気?

 
つじ心療内科
【住所】広島市安佐南区東原1-1-2 シーブリーズ東原七番館2F
【TEL】 082-850-3055 
突然起こる強い不安から、息苦しい、過呼吸、動悸がする、胸苦しい、喉が詰まる、手足がしびれる、めまいといった身体症状。不合理な反応を繰り返す。社会不安障害・パニック障害・強迫性障害などの「不安障害」について【つじ心療内科 院長 辻誠一先生】
不安障害や睡眠障害で悩む多くの人が、一人ひとりの患者を丁寧に診てくれる辻院長を頼りにしている
 
誰でも人前で話をする時は緊張します。満員電車から早く降りたい気持ちになったことや、外出した後に「ちゃんと鍵をかけてきたかしら?」と気になった経験は皆さんあると思います。
「不安」は誰にでもある感情ですが、過度に不安状態になったり、不安によって繰り返し不合理な反応が現れるようになってしまうと、日常生活にも支障が出てしまいます。
最近では広く知られるようになった「不安障害」ですが、実は不安障害は「こころの病」というよりも、「脳の病気」であることを知っていましたか?
今回のレポートは、「つじ心療内科」の院長、辻誠一先生に不安障害について話しを伺いました。「社会不安障害」「パニック障害」「強迫性障害」を例にあげて頂き、不安障害がどういった病気か詳しく説明してもらいました。

不安障害とはどんな病気ですか?

「不安障害」とはその名の通り、不安な気持ちが強くなる病気です。
家でリラックスしている時はあまり不安になることはないのに、ある特定の状況や場所で非常に強い不安に襲われ、身体のいろいろな部分に様々な症状が現われたり、不安を避けようとする「回避行動」をとるようになったり、また安心を得るために無意味な行動を反復してしまうといったことが起こり、人によってはそれが原因で社会生活に支障をきたすこともあります。
不安障害と一口に言っても、不安が現われる特徴や症状によって分類されます。頻度が高いものとして「社会不安障害」、次に「パニック障害」や「強迫性障害」があげられます。

一番多いと言われる「社会不安障害」から伺いたいのですが。

これは、人前で何かすることに過剰な不安を感じてしまう不安障害で、「対人恐怖症」「赤面症」「あがり症」といった俗称で呼ばれることもあります。日本人の3〜13%が社会不安障害だと推定されており、決して特別な病気ではありません。
学校で先生にあてられて発表する時は誰だって緊張します。でも普通だったら初めは緊張しても徐々に慣れていくものだし、緊張しながらも頑張って何とか乗り切れるものですが、社会不安障害の場合は人前で突然不安が強くなり、極度の緊張から頭が真っ白になって全く話せない状態に陥ってしまいます。何をしゃべったらいいのか分からなくなるだけでなく、息苦しい、過呼吸、動悸がする、胸が苦しい、喉が詰まる、手足がしびれる、めまいといった様々な身体症状も伴います。
何回発表しても慣れるどころか、先生にあてられる度に強い緊張が起こり、次第に不安を感じる場面に立ち会うのを避けるようになります。それが原因で、中には不登校や引きこもりになるケースもあります。
主婦の方ですと、学校のPTA役員に選ばれて人前に出る機会が多くなったり、会社員の方でしたら昇進して大勢の人前で話す機会が増えて、「恥ずかしい思いをしたくない」「失敗したくない」という気持ちもあり、人前で話すことに極度の不安や恐怖を感じるようになって、社会不安障害になってしまうことがあります。
人に対する不安から起こる社会不安障害は、大勢の人前に限らずコンビニで店員さんと話をするだけでも緊張して動悸がしたり、受付で字を書いている時に手元を注目されることで震えてしまうといった方もいます。

次に、「パニック障害」とはどんな病気ですか?

突然強い不安感に襲われる点で社会不安障害とよく似ていますが、パニック障害は対人不安ではなく、主に「閉所」に対して不安を感じる不安障害です。混雑したバスや電車、エレベーターの中で突然強い不安が起こり、息苦しさや、動悸、めまいなどの症状に襲われるのが最も多いケースです。
「閉所」は空間の狭さだけでなく、「精神的な閉所」も含まれます。たとえば、歯医者さんで椅子に座って治療が始まったら、そこから逃げ出せませんよね。美容室で美容師さんが髪を切り始めたら、カットが終わるまではそこから離れることはできませんよね。それが広々としたスペースの美容室であっても、「途中で逃げられない」という「精神的な閉所」が不安をもたらし、パニック障害を引き起こすことがあります。
また、車の運転で町の中を走ることはできても、高速道路やトンネル、橋を渡るのを避けたがる方がパニック障害の患者さんに多いです。「出口につくまではその状況から逃げられない」といった状況もまた精神的な閉所と言え、不安を感じてしまうのです。
パニック障害の身体症状は社会不安障害とほぼ同じで、社会不安障害とパニック障害は合併しやすいことが分かっています。

「強迫性障害」とはどんな病気ですか?

強迫性障害は先ほどの2つとは少しタイプが違うのですが、ひとことで言うと「強いこだわり」を認める病気です。理屈では繰り返す必要がないと分かっているのに、同じことを繰り返しやってしまったり考えてしまう不安障害です。
有名な症状としては、ガスの元栓や鍵をかけ忘れていないかどうかの確認です。外出後に駅まで行ったのに鍵をかけてきたかどうかが気になって、戻って確認してしまう。ちゃんと鍵がかかっていることが確認できれば一時的に安心するのですが、その場を離れると自分の行為が完全だったかどうか不安になってきて、また確かめに帰ってしまうということを繰り返してしまいます。
出掛けにバタバタしたり、ぼんやりしていて鍵のかけ忘れが気になることは誰にでもありますが、一度確認すれば安心して出かけられますよね。ところが強迫性障害の場合は、ちゃんと鍵をかけたことが分かっているのに絶えず疑いを持ち、何度も確かめないと気がすまないのです。そして、同じ行動を繰り返すことで、さらに不安を増長させてしまいます。
他にも、手の汚れが気になって手がぼろぼろになるまで洗い続けてしまうとか、大震災の映像などを見て自分にも同じことが起こるのではないかといった不安が頭から離れず、そんなことが起こるはずはないと分かっていながらも、家族を心配して何回も電話をしてしまうといったケースがあります。

これらの不安障害になる原因は何ですか?

心療内科の疾患はよく「こころの風邪」などと言われ、精神的ストレスが原因だと考えられがちですが、不安障害はストレス性というよりも、むしろ「脳の病気」だと言えます。脳梗塞や脳出血のような脳の血管障害の病気とはまた違うのですが、不安障害には脳の神経伝達物質である「セロトニン」の変化が大きく関係していると考えられています。
よく患者さんが、「気にし過ぎるのが良くないんでしょうね」「小さい頃から両親や先生に、“もっと頑張れ”“しっかりしろ”と言われて自分を責めながら生活してきた」とおっしゃられるのですが、その方の性格や育ってきた環境などが直接の原因となる病気ではありません。ですから内向的な方だけでなく、元々は人前で話すことが好きだったというような外交的な方も社会不安障害を発症します。学校の先生のような人前で話をすることが多い職業の方もおられます。
内向的な性格も、職業も知的レベルも、あまり関係ありません。患者さんには「自分自身の性格などを責める病気ではないですよ」と、いつもお話しています。不安障害は脳内の神経伝達物質の乱れによる脳の病気の1つだということを認識して、症状があって社会生活に支障があると感じているようなら、適切な治療を受けることが大切です。

どのような治療を行うのでしょうか?

不安障害の治療では、主に「SSRI」というお薬を用います。「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の略で、セロトニンの分泌を調整する効果があります。精神安定剤とは異なるお薬ですが、効果が現われるまで少し時間がかかるため、その間は安定剤を併用しながら段階的に量を調節していき、SSRIの効果が出始めたら安定剤を中止するといったケースが多いと思います。
薬物療法で症状が緩和されてきたら、「認知行動療法」を勉強していただくよう提案しています。これは、簡単に言うと不安になった時の「行動パターンを変えていく」といった治療法です。たとえば、社会不安障害でしたら、人に見られていることを認知して不安になるものですが、今までだったらその不安を回避していたところを「少しずつ避けずにトライしてみましょう」「不安を感じたらこうしましょう」と、行動パターンをトレーニングしていきます。
「お薬以外の治療=カウンセリング?」と聞くと、「アドバイスをしてもらうところ」だと思うかもしれませんが、実はそうではなくて、「自分を変えていく場」なんですね。性格を変えることは難しいけど、行動を変えることは頑張ればできるもので、人と接する場面を想定した行動パターンを練習していけば、だんだん自信がついてきて、不安を感じる様々な状況にも適応できるようになります。書店に並ぶ自己啓発本などのハウツー本の多くは、この認知行動療法がベースになっているのではないでしょうか。
薬物療法と認知行動療法が主な治療となりますが、不安障害は心療内科の疾患のなかでも「良くなった!」と喜ばれることが多い病気だと感じていますのでお困りの方はご相談くださいね。

突然起こる強い不安から、息苦しい、過呼吸、動悸がする、胸苦しい、喉が詰まる、手足がしびれる、めまいといった身体症状。不合理な反応を繰り返す。社会不安障害・パニック障害・強迫性障害などの「不安障害」について【つじ心療内科 院長 辻誠一先生】
心療内科、精神科、神経内科が専門。患者の立場に立った通いやすいクリニックである
 

最後に、どんな自覚症状があれば受診した方がいいか教えてください。

不安障害はリラックスしている時は何も症状が出ない病気なので、「この症状があれば受診してください」というものではありません。もちろん症状が軽い方が治りやすく、「こんなに良くなるのなら、もっと早く治療に来ればよかった」と皆さんおっしゃられますが、こちらが治療を押し付けるものではありませんから、社会的に自分が困っていて治療しようと思った時が、受診のタイミングなんだと言えます。
心療内科は敷居が高いといったイメージがあるかもしれませんが、実際に来てみたら他の科と変わらないと感じて頂けると思います。初診の際は問診を丁寧に行いますので、予約されることをおすすめします。
以前から症状に悩んでいたという方はどうか一人で苦しまず、気軽に受診して下さい。

医師のプロフィール

辻誠一先生

●広島大学医学部卒業
●同大学大学院修了
●広島大学病院神経科精神科および救命救急部
●国立病院機構福山医療センター神経科精神科
●広島市立安佐市民病院神経科精神科
●国立病院機構賀茂精神医療センター 医長
●島根大学病院神経科精神科 講師


‐資格・所属学会‐
・医学博士
・精神保健指定医
・臨床研修指導医
・日本医師会認定産業医
・日本精神神経学会認定精神科専門医
・日本精神神経学会会員
 

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「不安障害」とはその名の通り、不安な気持ちが強くなる病気です。
ある特定の状況や場所で非常に強い不安に襲われ、身体のいろいろな部分に様々な症状が現われたり、不安を避けようとする「回避行動」をとるようになったり、また安心を得るために無意味な行動を反復してしまうといったことが起こり、人によってはそれが原因で社会生活に支障をきたすこともあります。


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