(この記事は2013年3月14日時点の情報です)
清水浩志 先生(小児科)
嘔吐下痢を繰り返すお腹にくる風邪、ノロウイルス・ロタウイルス性胃腸炎
しみずこどもクリニック
【住所】広島県広島市安佐南区祇園3丁目12-12-2
【TEL】 082-846-0070
地域の子どもたちの明るい未来のために健康を守り続けるやさしい先生
幼稚園や保育園、学校での集団生活では、どれだけ気を付けていても、子どもの感染症は避けては通れません。中でも、「ロタウイルス」「ノロウイルス」などの感染が引き起こす「ウイルス性胃腸炎」は、下痢や嘔吐の症状が続くうえにこれといった治療法がなく、子どももお母さんにとっても本当につらい病気ですよね。
今回は、「しみずこどもクリニック」の院長、清水浩志先生にウイルス性胃腸炎について、詳しくお話いただきました。清水先生に教わった、舟入病院監修の家庭で簡単に作れる「経口補水液」のレシピも紹介しています。脱水症状の予防だけでなく、普段の水分補給にも有効ですよ。
感染症胃腸炎とはどのような病気ですか?
感染性の胃腸炎には、「ウイルス性胃腸炎」と「細菌性胃腸炎」がありますが、秋から冬にかけて子どもに流行する感染性胃腸炎のほとんどがウイルス性です。ノロウイルス、ロタウイルスによるものが多く、秋口から年内にかけてノロウイルス、年明けからロタウイルスが増えるという印象です。
どのような症状があるのですか?
ウイルスの種類が違っても、実際に出てくる症状はどれも似ています。ウイルス性胃腸炎は「嘔吐下痢症」「おなかにくる風邪」とも呼ばれており、主な症状は嘔吐、下痢、発熱です。また、下痢と嘔吐によって急速に水分が失われるため脱水症を起こしてしまうこともあります。
症状の程度はその子その子によって異なり、熱がなくて嘔吐だけを繰り返したり、発熱と下痢だけということも。39度以上の高熱を伴う患者さんにはロタウイルスが多い印象があります。一般的にウイルス性胃腸炎では血便になることはなく、血便の場合は細菌性胃腸炎を疑います。ロタウイルスによる胃腸炎では白色便(黄色っぽい、クリーム色みたいな便)が有名ですがロタウイルス以外のウイルス性胃腸炎でも白色便になることはあり、ロタウイルスだけに特徴的な症状ではありません。
診断する際、どのウイルスに感染しているのか調べるのですか?
細菌性胃腸炎であれば抗生剤による治療になりますし、インフルエンザであればタミフルを使いますから、「細菌性胃腸炎でないか?インフルエンザにかかっていないか?」はきちんと診断しますが、どのウイルスに感染しているかは積極的に検査しません。なぜなら、ウイルス性胃腸炎の場合は、治療に有効な特効薬がないからです。
どのウイルスであっても、整腸剤や熱冷まし、下痢がひどい場合は一時的に下痢止めを使う(下痢止めを使わない先生もいらっしゃいます)など、同じ対処療法しかできませんので、ウイルスを特定してもあまり意味がないんです。
何日ぐらいで良くなりますか?
症状は個人差が大きいので、「何日間で治りますよ」とは言えないのですが、嘔吐なら早ければ半日、せいぜい2日で治ることが多いですね。下痢の場合は、乳児だと長引くこともあって2週間とか、長いと1か月くらいかかる子もいます。
ウイルス性胃腸炎は、特効薬がなくダメージを受けた腸粘膜が回復するのを食事療法(消化の良いものを選んで与えて胃腸の負担を軽くしてあげる)しながら待つのが治療の基本です。子どもが「ごはんが食べたくなった!」と、元気に言ってくれるのを待つしかありません。嘔吐や下痢の症状で苦しんでいるお子さんに何もしてあげられないことが、ウイルス性胃腸炎の辛いところです。
食事についてアドバイスをお願いします。
嘔吐が続いてるときは食事は与えない方がいいですね。特に続けて吐いた後は、1、2時間は胃腸を休める時間を作りましょう。
また、嘔吐や下痢が長く続くと、体内から大量の水分と塩分を失うため、補給が必要となります。市販の経口補水液やイオン飲料でもいいですし、ご家庭でも作ることもできます。湯冷まし1Lに、砂糖40g、食塩3gを入れ、レモンなどの果汁を少し加えると飲みやすくなります。砂糖を入れることで吸収効率がよくなり、脱水症状の予防ができます。
嘔吐がなくなった後も、傷んだ腸の粘膜が修復されるまでには数日かかります。できるだけ消化のいいものを、少しずつ食べるようにしていきましょう。
重症化するケースはありますか?
嘔吐や下痢の回数が多く、何も飲めずに脱水症状を起こしている場合は点滴が必要な場合もあります。重症化して入院が必要になることもありますが6か月未満くらいの月齢の若い乳児が大半です。
稀ではありますが、ロタウイルス胃腸炎は急性脳症を合併したり、痙攣を引き起こすことがあると報告されていますので、対処療法が中心とはいえ、しっかり診ていく必要はあります。また、3歳未満の子で熱はなく、嘔吐だけを繰り返し、顔色が悪いといった症状の場合は、腸重積の疑いもありますので注意しなければいけません。
1度なってしまえば、その後はかからないものですか?
一般的に一冬の間に同じウイルスに感染して胃腸炎を発症することはまずありませんが、「年末はノロだったけど、年始はロタ」ということは十分あり得ます。
ウイルス性胃腸炎は再感染があり得るので、一度なったらもうかからないという病気ではありませんが、2回目、3回目と再感染するにつれて症状は軽くなってきます。
軽い場合だと、なんとなく吐き気があるけど、嘔吐することもないまま治ってしまうこともありますし、不顕性感染といってウイルスの陽性反応は出るけど症状がほとんど出ないこともあります。
一番症状がきついのは初感染の時で、生まれて初めてかかった、その子にとって1回目のロタウイルスであったりノロウイルスであった時は、嘔吐下痢がひどく、高熱が出ることが多いです。また、お子さん経由でお母さんに移ってしまうこともあると思いますが、子どもの頃にかかったことがあるけど再感染したのは何十年ぶりという場合は、症状がひどいことがあります。
ウイルスの感染経路についてお聞かせください。
ロタウイルスもノロウイルスも接触感染で伝染する感染症です。ノロウイルスは牡蠣にあたる原因として有名ですが、牡蠣などの海産物から感染したいわゆる食中毒の件数よりヒトからヒトで伝染して感染した件数の方が多いと思われます。ノロウイルスもロタウイルスも伝染力が極めて強いですから、集団生活をしているお子さんは感染しやすいですね。
また、ウイルス性胃腸炎を発症した患者さんの吐物や便の中には、ウイルスが大量に含まれているため、看病をしているお母さんや家族に移ってしまうことがあります。接触感染だけでなく、拭き取りきれなかった汚物が残っていて、それが乾燥して風で舞い上がり、空気感染することもあるんですよ。
感染を広げないためには吐物や便の処理に気を付けることが大事。病院なら手袋をして、吐物はきれいにふき取り、消毒に関しては、ロタウイルスとアデノウイルスはアルコール系の消毒液、ノロウイルスは塩素系消毒薬で消毒します。一般家庭では、拭き取った吐物は、ビニール袋に密閉して速やかに捨てること、吐物や便を処理した後しっかり手洗いすることが重要です。
清水浩志先生
●広島大学医学部卒業
●広島大学大学院医学系研究科修了
●福島生協病院小児科
●広島市立舟入病院
●広島大学医学部小児科助手
●マツダ(株)マツダ病院小児科
●中国労災病院小児科部長
●医療法人あおぞらしみず小児科
‐所属学会・資格‐
・医学博士
・小児科専門医
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