(この記事は2018年5月21日時点の情報です)
小田 義仁 先生(歯科)
足から呼吸・嚥下まで…子どもの健康と正しい発育のために大人が気を付けてあげられること
小田歯科・矯正歯科
【住所】広島県広島市安佐南区大町西3-21-13 アドグレイス1F
【TEL】 082-879-0648
長年地域の方に親しまれている、勉強熱心で患者思いの小田院長
すぐに転ぶ、骨折しやすい、しゃがめない、片足立ちできない、腕がまっすぐ上がらない、手すりがないと階段をのぼれない、肩こりがひどい、などなど…高齢者に多いとされているロコモティブシンドロームが子どもたちにも増えている事、ご存じですか?
文部科学省もこれらの事態を重くみて、現在は学校健診に運動器検診も取り入れられるようになっています。
多くの公園はボール遊び禁止、小学生になるとゲームをしたり習い事や塾で多忙になったり…、外遊びの場所も時間も大きく減った子どもの生活は昔と大きく変わっています。
運動不足により正しく発育できなかった身体は、その部位が正しく機能しないだけでなく、あちこちに歪みを生じさせる事になってしまいます。
今回は安佐南区「小田歯科・矯正歯科」の小田義仁院長に、パパ・ママをはじめ周りの大人たちにぜひ気を付けてもらいたい子どもの発育についてお聞きしました。
足、呼吸、舌、嚥下など、普段の生活で大人が少し気を付けてあげる事で、子どもの体の正しい成長につながります。
ぜひ参考にして、お子様の健康な体づくりにお役立てください。
今回は子どもの発育についてお話しいただけるという事ですね
僕は元々矯正が専門ですが、虫歯や歯周病などは原因がはっきり特定できて予防がかなり進んできている一方で、不正咬合などは予防が少し手薄なんじゃないかと思っています。
長く矯正をやっていると治療が終わった後の安定などで色々悩むところがありました。
というのは、原因が除去できない限り、また歯並びが乱れてくる事があるからです。
不正咬合の原因はもちろん先天的なものもありますが、後天的なものもあります。
先天的なものは仕方ないのですが、後天的なところで何とか予防に繋がる糸口がないかと思っていた中で見つけた予防法の一つが、博多にあるみらいクリニックの今井一彰先生が考案された「あいうべ体操」です。
みらいクリニック作成「あいうべ体操カード」より
あいうべ体操の最終的な目的は、口が閉まって鼻で呼吸できるようになる事です。
歯というのは唇や頬、舌などの筋肉のバランスがとれたところに並ぼうとするので、そこにバランスの乱れがあると、歯並びにも影響してきます。
バランスの乱れというのは舌の位置や嚥下の仕方、そして唇や頬に異常な緊張がある、などですが、それらの乱れを整えるために、あいうべ体操は比較的指導するようにしています。
また、最近の子どもさんは、何もないのによく転んだり、歩くのを嫌がったりするという話を聞いていた中で、足育のセミナーみたいなものに参加したところ、今、子どもの足に異常が起きている事を知りました。浮き指、かがみ指、組み指など、足指の異常があるためにすぐ転んだり、すぐ骨を折ったりする子どもさんが増えているというのです。
子どもさんが歩いたり走ったりする機会がどんどん奪われてしまう事によって発育に異常をきたしているんじゃないかという事で、足についていろいろ調べてみました。
土踏まずの形成は大体6歳くらいまで、足の骨が確立して足が完成するのが大体17歳くらいと、長きにわたって生育していくので、そこをしっかり鍛えていく事が健康のために必要なのではないかと思います。
なぜ歯科医が足の話なのかというと、歯並びは姿勢に影響を受けるからです。
足という土台がしっかりしていないと姿勢が崩れて、歯並びにも異常をきたしてくるという事で、舌の位置、呼吸、そして足の発育にも興味を持っていただきたいなと思っています。
正しい発育のために、何が必要ですか?
生まれたての赤ちゃんは、手にも足にも小さい骨がたくさんあって、要は肉の中に骨のもとが浮かんでいるような状態で、それが徐々に発達して組み合わさって、くっついて、それから発育していくのですが、適度に使用しないと発育がうまくいきません。
これは、呼吸もそうですし噛んだり飲んだりする事もそうですが、生まれながらにして先天的にあるものではなく、トレーニングで学習して獲得していくものです。
ですが、子どもさんが自分でそういう環境を作る事はなかなかできないので、できれば小さい子どもさんをお持ちの親御さんに気を付けていただいて、そういうチャンスをいっぱい与えてあげてほしいなと思います。
最近は思いきり体を動かして外遊びできる環境が減っていますね
子どもは、親や大人から「ダメ」と言われる事はできませんから、トレーニングできる環境は大人が作ってあげないといけません。
足でいえば、しっかり歩く事が必要です。何か特別な運動をするというような事じゃなくても、日常の中で、たとえばお母さんが車に乗ったりエレベーターに乗ったりと、自分が楽な方にいってしまうと、子どもたちの歩く機会、運動する機会を奪ってしまう事になりますから、気を付けていただきたいなと思いますね。
しっかり使ってトレーニングする事で正常な足を作っていくのですね
足の異常に関しては使う事もそうですが、他に大きな影響を与えているといわれているのが靴のサイズです。子どもの足は、大人の常識からすると考えられないくらいのスピードで大きくなるので、不安定だったり不適切だったり、いわゆる合わない靴をはいていると、指の異常などが起きてくるといわれています。ですから子どもさんの足に注目していただいて、適切なサイズ、適切な形の靴を与えてあげる事が必要かと思います。
親が素人目に見て分かる足の異常というのはありますか?
素人目でパッと見て分かるのが外反母趾、内反小趾、それから寝指(指がねじれて寝ている状態)、あと、今よく問題にされているのが浮き指で、足の裏を床にペタッとつけた時に指が床につかず、浮いている状態になる、というものです。
程度の問題もあるので数本だけのケースもあれば指全体が浮いてしまうケースもありますが、指がきちんと床に接地しているかどうかは、立った状態で指のところに名刺でもハガキでもいいのですが紙をスッと通す事で確認する事ができます。
大町郵便局の斜め向かい。医師2名・衛生士3名体制で一般歯科から矯正歯科まで幅広く対応。
不安定な姿勢は、歯にどのような影響を与えますか?
歯並びは、大体3歳くらいで乳歯列が完成して、6歳くらいからは永久歯への交換が始まってきますが、永久歯列の完成までは6〜7年くらいと長期にわたります。
そのように、どんどん歯が入れ替わって歯列が形成されていく時期に姿勢が悪かったり、もしくは頬杖をついたりなどの悪い習癖、そして呼吸の問題(口がいつも開いていて口呼吸をしている)、正しい嚥下ができないがために舌が歯を押す事などを積み重ねていると、歯並びの異常が出てきます。
正しい嚥下とはどのようなものですか?
通常、舌の位置というのは上顎のところに舌がついていないといけません。
みらいクリニック作成「あいうべ体操カード」より
上の前歯の奥あたりに舌の先がきて、舌が上顎にペタッと吸い付くような形が正しい舌の位置ですが、物を飲み込む時は上の前歯の上部あたりから舌の先がスタートして、そこから真ん中、後ろへと徐々に上顎の裏にペタッとくっついて、舌の奥の部分が喉の奥と接触する事によって喉の方に物を送っていく、というのが正しい嚥下の仕方です。
しかし、飲み込むたびに舌が歯を押したり、舌が奥歯の上に乗ったりすると、舌の力はかなり強いので、その事によって歯の位置などに異常が出てきます。
上顎正中口蓋縫合(じょうがくせいちゅうこうがいほうごう)といいますが、小学生いっぱいから中学生くらいまでは上顎の真ん中の骨が成長中で、くっついていないんです。舌でここを押す事によって押し広げて上顎の成長を促進するという機構があるようで、中学生〜高校生になってくると、左右の骨が噛み込んできてくっつきます。
このように、骨がくっつくまでの間は柔軟というか変化している状況なんですね。そして、それプラス口がいつも開いていると、唇のリップシールがないので歯が前に出やすいですし、唇を開いていると、上顎にあった舌が下に降りてしまう状態になります。
ですから、唇がしっかり閉められる状態を作らないと鼻呼吸にはなりません。今はそういった部分があまりできていない子どもさんが多いので、それを見つけては指導するようにしています。
その他に、保護者に気を付けていただきたい事はありますか?
口の周りの筋肉や摂食のトレーニングは授乳や離乳などの段階からしないといけません。
そこができていないために異常をきたしている場合は、やはり日頃の生活から見直してもらえればと思います。前歯で齧り取る(かじりとる)とか、食材をたくさん噛めるようにあまり小さく刻まないとか、食事する時は飲み物で食べ物を流し込まないとか。
あとは環境ですね。足が宙ぶらりんの状態だと体の安定がとれないので、しっかり足が床についた状態で椅子に座って、正面を向いて食事する事。横を向いてテレビを見ながら食事をするだけでも体の歪みや噛み合わせの歪みは出てきてしまうので、日頃からそういう環境づくりをしてあげてほしいな、と思います。
そうする事によって体の健康もより維持できるのではないかと思いますし、そういう習慣をしっかりつけてあげる事で、今度はその子どもさんが大人になって、親になった時に、また子どもさんにそういう気配りができるようになってくれたらいいな、というのが夢です。先は長いですけどね。
医師のプロフィール
小田 義仁 先生
●岡山大学歯学部 卒業
●広島大学歯学部歯科矯正学教室
●歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
‐資格・所属学会‐
・日本矯正歯科学会 認定医
・日本顎関節学会
・日本口蓋裂学会
・安佐歯科医師会 学校保健部所属
・広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
・岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
・岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
・アカシア歯科医会学術理事
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