(この記事は2013年4月19日時点の情報です)
増野賀子 先生(皮膚科)
子どもの足にできるウオノメのようなイボ。 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とは?
ましの皮ふ科クリニック
【住所】広島市安佐南区東原1丁目1-2-4F
【TEL】 082-832-2834
科学的根拠に基づいた確かな医療をモットーに、女性医師ならではのきめ細かな診療を行う増野先生
子どもの足の裏や指先に小さなイボが…。削っても大丈夫? 自然に治るのかしら?
「ウオノメ(魚の目)」や「たこ」のように見えますが、実はこれ、「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」というウイルス性感染症で、感染するお子さんが多いとか。放っておいたら、増えたり、大きくなったり、家族に移してしまうこともあるので要注意です。
今回のレポートは「ましの皮ふ科クリニック」の院長、増野賀子先生に尋常性疣贅について話を聞きました。尋常性疣贅の治療についても、分かりやすく説明して頂いてます。
お子さんの足をチェックして疑わしいイボを見つけたら、皮膚科の専門医に相談しましょう!
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とはどんな病気ですか?
尋常性疣贅は、「ヒト乳頭腫ウイルス」というウイルスの一種が皮膚に感染してできます。
皮膚は解剖学的な構造や免疫の働きなど、様々なバリヤー機構でウイルス感染から守られていますが、小さい傷が出来たり免疫力が低下すると、疣贅が出来やすかったり、ひどくなったり、治りにくくなったりします。ですから、免疫力が低くなるような病気にかかっている時、免疫を押さえるような治療を受けている時やアトピー性皮膚炎などで、皮膚のバリヤー機能が落ちている時には、特に注意が必要です。
また、特別な場合でなくても、手あれや髭剃り後など、目に見えないくらいの小さな傷からでもウイルスが侵入します。ヒト乳頭腫ウイルスは小さな傷を通して皮膚に入り込むと言われているので、傷を作りやすい手足にできることが多いですが(半数くらいは足にできます)、どこの部位にもできる可能性があるのです。
ウオノメとどう違うのですか?
ウオノメはふつう大人の足の裏や趾(ゆび)などにできる数ミリの固い角質の塊で、歩いたり、押さえたりすると痛みがあるのが特徴です。圧迫に反応してできるので、骨が出っ張っているところにできます。
一方、疣贅は数mmから1cmくらいまでの大きさで、表面が固くごつごつして盛り上がったものが多いですが、成長するとかなり大きくなることもあります。疣贅は痛くもかゆくもないことが多いですが、なかには押さえると痛みを感じるものもあります。小さくて痛い疣贅だと、ウオノメそっくりで、区別がつきにくいことがあります。
放っておいたら自然に治るものですか?
自然と治ることもあるのですが、放置していると疣贅が大きくなったり、数が増えることもありますので、自分で削ったり触ったりせずに皮膚科を受診してください。
また、ウイルスですから人にうつすこともあります。特に家族間の感染率が高く、家族に疣贅の人がいる割合は10%といわれていますので、感染を拡大させないためにも早めの治療をおすすめします。
治療はどのように行うのですか?
治療は次の3つの方法が考えられます。
1、できてしまった疣贅を何らかの治療で除去する
(液体窒素凍結療法、スピール膏貼付、活性型ビタミンD3外用療法、グルタルアルデヒド外用、モノクロロ酢酸塗布等)
2、免疫力を上げて疣贅を治す(漢方薬の内服等)
3、原因となっているウイルスを退治する(ビダラビン外用等)
治療法はたくさんありますが、中でも頻繁に行われる疣贅の治療法について少し述べたいと思います。
疣贅を除去する治療でよく行われるのは、「液体窒素凍結療法」が一般的です。これは、−196度の液体窒素を綿球等にひたして患部に押し当てます。痛みを伴い、反応が強い場合には水疱、血疱ができることがあります。1度では治らない場合があり、1〜2週ごとの通院が必要ですが、麻酔や消毒なども通常不要で、疣贅の第一選択の治療法です。
また、「スピール膏貼付」もポピュラーな治療です。これは、ウオノメ治療などにも使われる50%サリチル酸絆創膏を、小さく切って疣贅に貼ります。広く貼りすぎたり、ずれたりすると、周囲の皮膚に傷ができるので注意が必要です。治療単独では効果が弱い傾向があるかと思いますが、痛みはありません。
全身的な免疫を賦活することで、疣贅を消退させるものとしては、「ヨクイニン内服」が広く使われています。副作用はほとんどなく、まれに胃部不快感、軟便などの消化器症状が見られるぐらいです。液体窒素凍結療法などと併用でき、子供も内服できます。
では、どの治療を選べば良いのでしょうか?
疣贅の除去が一般的な治療ですが、いろいろな治療法があるというのは、この治療をすれば絶対治るという治療がないということを反映しています。一人の患者さんにとても良く効いた治療法が、別の患者さんに効くとは限りません。これらの治療を単独または組み合わせて、それぞれの患者さんに一番適していると思われるものを選んで行います。
また、どの治療法を用いても、多くの場合一回の治療で治すことは難しく、何回か繰り返してやっと治るのが普通です。治るまでの回数は、疣贅の大きさ、部位、治療に対する反応などにより、個人差があります。
治療法によっては、痛い治療と痛くない治療があります。液体窒素凍結療法は海外も含めて効果の評価が高く、行われる頻度が高いですが、この治療は痛みを伴います。子供さんや痛みに弱い方には痛みの少ない、またはない治療を組み合わせて行いますので、皮膚科専門医にご相談ください。
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お子さんのいるお母さんに注意してもらいたいことは?
尋常性疣贅は、全人口の7〜10%の患者さんがいるとの欧米の報告もあり、意外と多くの人が知らない間にかかっているようです。年齢でいうと、0〜9歳が約30%、10〜19歳が約20%、以後右下がりに減少していきます。子どもは免疫力が低く、集団生活で接触して感染する機会が多いため、尋常性疣贅になるお子さんが多いのだと考えられます。
尋常性疣贅は、ウオノメと思って放置されていることもよくありますが、子どもにウオノメができることは珍しいので、お子さんにウオノメのような症状があって、数が増えたり、大きくなっていることに気付いたら、皮膚科を受診してくださいね。
医師のプロフィール
増野賀子先生
●九州大学病院皮膚科
●九州中央病院皮膚科
●福岡大学病院皮膚科(助手、病棟医長)
●新日鐵八幡記念病院皮膚科(医長)
●広島赤十字・原爆病院皮膚科
‐所属学会・資格‐
・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
・日本皮膚科学会
・日本臨床皮膚科医会
・日本美容皮膚科学会
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