(この記事は2014年9月16日時点の情報です)
藤東淳也 先生(産婦人科)
経過観察でいいの? 子宮筋腫の正しい知識を知りましょう。
藤東クリニック
【住所】広島県安芸郡府中町茂陰1-1-1
【TEL】 082-284-2410
婦人科良性腫瘍の内視鏡手術のエキスパートとして、数多くの実績を持つ藤東院長。
子宮筋腫が原因で月経痛や貧血で苦しんでいる人もいれば、症状がほとんどなく「経過観察」と言われてそのままの人も・・・。
子宮筋腫は、婦人科系の疾患の中でも頻度が高く、誰にでもかかるありふれた病気ですが、どんな時に治療が必要になるのか、知らない方も多いようです。
そこで、今回は「藤東クリニック」の院長、藤東淳也先生に、子宮筋腫の症状や治療についてお話を伺いました。
藤東先生は、全国に330名ほどしかいない「日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医」の資格を持つ、婦人科良性腫瘍の内視鏡手術のエキスパート。女性特有の疾患だからこそ、手術の際に心掛けていることなどもお話し下さいました。
子宮筋腫とはどんな病気ですか?
「筋腫(きんしゅ)」とは、筋肉から発生する腫瘍(しゅよう)のことをいいます。子宮は筋肉でできており、子宮を作っている筋肉の一部がこぶ状に大きくなった状態を子宮筋腫といいます。
「腫瘍」と聞くと癌のような怖い病気をイメージするかもしれませんが、腫瘍には良性と悪性があり、子宮筋腫は良性腫瘍です。発生した場所でのみ大きくなるもので、肉腫と呼ばれる悪性腫瘍のように転移したり、組織を破壊して繁殖することはなく、命にかかわる危険なものではありません。
子宮筋腫は非常に頻度の高い病気で、30、40代の女性の2、3人に1人は、子宮筋腫があるのではないかと考えられています。ごく小さな筋腫を含めるとほとんどの方がお持ちのありふれた病気です。
症状についてお聞かせください。
子宮筋腫は1個だけポコっとできるよりも複数個できることが多く、数や形は様々です。筋腫ができた場所や大きさによって症状は異なり、中には無症状の方もいます。
子宮の主な役割は胎児を育てることで、妊娠をしていない普段の時は、月に一回生理を起こす働きをしています。なので、子宮内側の生理を起こすような場所にできた場合は、筋腫が小さくても月経過多や月経痛などの症状が強く出てしまうことがあります。生理の量が多くなることで、貧血になる方もいます。
また、子宮の前方にできた場合は膀胱が圧迫されて頻尿になりやすく、後方だと腸があるので便秘がちになることがあります。大きくなった筋腫が骨盤の神経を圧迫することで、腰痛を訴える方もいます。
筋腫が見つかっても「経過観察」と言われることが多いようですね。
健康診断やがん検診の際に、「筋腫があります」と言われて、びっくりされた方も多いと思います。自覚症状がなく、たまたま検診などで筋腫が見つかったケースでは、治療の緊急性が低いことがほとんどです。
子宮筋腫では、筋腫自体が体に悪さをするわけではありませんから、筋腫が見つかっても自覚症状がなかったり症状が比較的軽い場合は、必ずしも治療する必要はなく経過を観察することになります。
経過観察と言われたら、様子を見ていく中で生理の変化に気を付けて頂ければと思います。半年もしくは1年に1度、診察を受けてもらい、筋腫が大きくなっていないか確認し、過多月経や月経痛がひどくなるなど、症状に変化が見られた時は早めに産婦人科に相談しましょう。
では、治療や手術が必要になるのはどんな時ですか?
子宮の内側に筋腫ができると、筋腫が小さくてもいろんな症状が出やすくなります。1、2センチ程度でも過多月経や月経痛の症状がひどいことがあり、治療を検討する必要があります。逆に、子宮の外側に筋腫ができた場合は、大きくなっても症状があまり出ないことが多く、5、6センチの大きさに育っても、手術をせずに経過観察することは珍しくありません。
ただ、筋腫があると妊娠にとって不利になることが多いです。最近は出産年齢が上がり、30代、40代で妊娠される方が増え、妊娠する年代と子宮筋腫になりやすい年代が重なってきました。将来の妊娠を希望される場合は、症状が軽くても手術を検討する場合があります。
また、閉経が近いため手術を見送ることもあります。筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなるのですが、閉経になると女性ホルモンが分泌されなくなり、筋腫が小さくなることが多いのです。
子宮筋腫の治療方針は、症状、筋腫の状態(大きさ、場所、数)、年齢、妊娠希望の有無を考慮しながら、患者さんと相談して決めていくことになります。
子宮筋腫では、どんな治療をするのですか?
治療には薬物療法と手術療法があります。
薬物療法には2通りあり、痛いところがあれば痛みを和らげる、便秘があれば便秘を改善するお薬を使うというように、症状を一時的に抑えるための対症療法と、筋腫自体を小さくしていくホルモン治療があります。
ホルモン治療とは、女性ホルモンの分泌を抑制することで筋腫を小さくする治療法で、分かりやすく言うとお薬を使って体を閉経の状態に近づけるものです。手術をしなくても筋腫を小さくできるのがメリットですが、継続して長期治療をすることができません。
女性ホルモンは、女性の体にとって必要なホルモンです。それがずっとない状態が続けば、骨量が減少するなど、体に様々な悪影響が出てしまいます。なので、ホルモン治療をする場合は、半年なら半年と、期間を限定して行います。
ホルモン治療を選択するケースとしては、今すぐ筋腫を小さくしてとにかく症状を緩和させたい方や、忙しくてすぐに手術が受けられないという方に向いており、更年期の方だとそのまま閉経に持ち込むのを狙ってホルモン治療を行うこともあります。
手術の前に筋腫を縮小させて、手術を安全に進めるために行われることも多いです。
手術について教えてください。
手術では、子宮ごと筋腫を摘出する子宮全摘術と、子宮は温存して筋腫だけを取り除く筋腫核出術があります。子宮筋腫の手術に腹腔鏡・内視鏡が導入されるようになり、筋腫だけを取る手術の技術が向上したことで、最近の傾向としては筋腫核出術が増えました。
内視鏡手術では開腹手術のようにお腹に傷をつけないので、手術後の痛みが少なく、入院期間が短いうえ手術痕が残らないなどメリットは多いです。
ただ、特殊な手術なので、内視鏡に特化した訓練を受けた医師でないと難しく、特殊な器具や設備が必要です。当院は「日本産科婦人科内視鏡学会 認定研修施設」として、内視鏡手術に熟練した医師が手術を行いますので、子宮筋腫や卵巣腫瘍の内視鏡手術をお考えの方はご相談ください。
藤東先生が手術で心掛けているのはどんなことでしょうか?
手術を受けられるのは、30、40代の方が多いですが、この年代の女性はこれからも仕事をして、妊娠もしていくといった大切な時期です。社会的にも家庭的にも必用とされている世代ですので、常にその方のその後の生活を念頭に置いて診療を行っています。
また、女性にとって大きな手術痕が残るのは大きな問題ですから、美容的なことも考慮しなければなりません。体への負担を少なくするだけでなく、精神的にもダメージのない手術を心掛けるようにしています。
快適に過ごせる院内。最新設備が施されており、産科、婦人科ともに充実した医療が受けられる。
子宮筋腫の治療を検討されている方に伝えたいことはありますか?
悪性の子宮肉腫が見つかる可能性も0ではないですが、子宮筋腫は基本的には命に係わる病気ではありません。筋腫があっても特に不調がないのであれば過度に心配する必要はなく、筋腫があることで生理痛がひどいとか、貧血に苦しんでいるとか、あるいは妊娠のためとか、ご自分の体や生活に影響があるために治療が必要になります。
ですから、治療を選択する時は、「筋腫があるから取る」というのではなく、「どうして治療が必要なのか?」を考えて、主治医と相談してください。
また、施設や医師によって治療方針も変わってきますから、場合によっては複数の施設で相談してみてもいいと思います。受け身ではなく、自分がどうしたいのか自分の考えを持つことが大切です。
最後に「広島ドクターズ」の読者にアドバイスをお願いします。
婦人科は女性の身体を専門に診る科ですので、気軽に相談できて、気楽に検診を受けられるような、かかりつけ医をもつことが大切です。
子宮の病気、卵巣の病気は、生理の不調から気付くことも多いので、生理で不安に思う症状がありましたら、産婦人科を受診して頂ければと思います。
医師のプロフィール
藤東淳也先生
●東京医科大学 医学部 卒業
●東京医科大学大学院医学研究科産科婦人科学専攻博士課程 単位取得
●博士 医学 東京医科大学 取得
●東京医科大学病院 産科婦人科学教室 研修医
●中野総合病院 産婦人科 医員
●戸田中央産院 産婦人科 医員
●東京医科大学 産科婦人科学教室 研究員
●東京医科大学産科婦人科学教室 助手
●東京医科大学八王子医療センタ− 産科婦人科医長
●東京医科大学産科婦人科学教室 助手
●米国カンザス大学医学部 細胞生物学教室へ留学
●東京医科大学産科婦人科学教室 講師
●東京医科大学病院産科婦人科学教室 医局長
●県立広島病院 婦人科部長
‐資格・所属学会‐
・日本産科婦人科学会専門医
・医学博士
・細胞診専門医
・日本がん治療認定医機構暫定教育医
・バイオインフォマティクス認定技術者
・がん治療認定医
・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
・日本内視鏡外科学会技術認定医
・婦人科腫瘍専門医
・母体保護法指定医
・新生児蘇生講習会専門コース修了
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